相変わらず世界中で猛威を奮っている新型コロナウィルスの影響で、東京オリンピックの開催に暗雲が漂っています。
元々、新型コロナの影響がなければ、7月24日~8月9日の17日間に渡って実施される予定ですが、世界中で感染拡大が収束しない現在、「東京オリンピックは予定通り開催されるのか、延期されるのか、はたまた中止されるのか?」と毎日のようにTVやネットで情報が飛び交っています。
オリンピックの開催延期や中止は誰が決めるのか?
そもそも、オリンピックの開催について、延期や中止は誰が決める権限を持っているのでしょうか?
契約上、大会を中止できる権限はIOCが持っています。
IOCの持つ権限と役割はこちらのページに示されており、日本語に訳すと以下のようになります。
ナショナルオリンピック委員会(NOC)、国際スポーツ連盟(IF)、
アスリート、オリンピック競技大会組織委員会(OCOG)からトップパートナーまで、
オリンピックファミリーのすべての関係者間のコラボレーションの触媒として機能し、
放送パートナーと国連機関、国際オリンピック委員会(IOC)は、
幅広いプログラムとプロジェクトを通じて成功を導きます。
これに基づいて、オリンピックを確実に定期的に開催し、
オリンピックのすべての加盟会員組織を支援し、
適切な手段により、オリンピックの価値を促進します。
オリンピック憲章によれば、IOCの役割の詳細は次のとおりです。
- スポーツにおける倫理の推進、およびスポーツを通じた若者の教育を支援し、スポーツにおいてフェアプレイの精神が普及し、暴力が禁止されるように努める。
- スポーツおよびスポーツ競技の組織、開発、調整を支援する。
- オリンピック競技大会が確実に定期的に開催されるようにする。
- 公共/民間の組織や当局と協力し、スポーツによって平和を促進するように努める。
- オリンピックの独立性を保護し、その政治的中立性を維持し、スポーツの自律性を維持するために行動する。
- オリンピックに影響を与えるあらゆる差別に反対する。
- IOCがすべてのオリンピックと関連事項の最高代表者として行動し、オリンピックに選出された競技者を支援する。
- 男女平等の原則を実施することを目的とし、あらゆるレベル・構造のスポーツにおける女性の昇進を支援する。
- ドーピングとの闘いを先導し、あらゆる競技会の腐敗に対して行動し、競技者とスポーツの完全性を保護する。
- 競技者の医療と健康に関する措置を支援する。
- スポーツおよび競技者が政治的または商業的に悪用されることに反対する。
- 競技者の社会的/職業的未来を提供するために、スポーツ組織と公的機関を支援する。
- すべての人のスポーツの発展を支援する。
- 環境問題に対する責任ある関心を支持し、スポーツの持続可能な開発を促進し、オリンピックがそれに応じて開催されることを要求する。
- オリンピックから開催都市および開催国への前向きな遺産を促進する。
- スポーツと文化および教育を融合したイニシアチブを支援する。
- 国際オリンピックアカデミー(IOA)とオリンピック教育に専念する機関の活動を支援する。
3番目と10番目に示されているとおり、「オリンピックを定期的に開催すること」も、「競技者の健康を守ること」もIOCの役割なわけです。
実際、マラソンと競歩は東京ではなく札幌で行われることが決まりましたし、IOCの決定は絶対のようです。マラソンのときは東京の8月の気温が、競技をするには暑すぎるということが論点でしたが、現在は新型コロナウィルスの世界的な流行が問題です。
上記の役割に照らしてみれば、この時期に世界中からアスリートと観客を東京に集めて、オリンピックを開催することが「競技者の健康を守ること」に合っているのか疑問ですね。開催国の首長にも開催都市の首長にも、開催延期/中止の権限が無いのであれば尚の事。せめて判断する時期だけでも具体的に早々に示してもらいたいものです。
オリンピックの開催時期を延期したらどうなる?
仮に新型コロナがそろそろ落ち着いたとして、オリンピックの開催時期を延期することはできるのでしょうか?
本来7月24日~8月9日に開催されるものを、仮に1ヶ月後ろ倒しにした場合(8月24日~9月9日)、アメリカではNFLとNBAのシーズンと重なります。ヨーロッパでは各国のサッカーリーグが始まる時期です。もちろん日本でもJリーグやプロ野球のシーズン中です。
オリンピックの映像は世界中に中継されるわけですが、上記のような国内のスポーツイベントの予定で埋まっている状況では、ほんの数ヶ月ずらすことも容易ではないはずです。
1年遅らせた場合は、オリンピックとは別の世界大会が控えています。
2年遅らせた場合は、冬のオリンピックと同じ年に開催ということになりますね。昔は夏・冬のオリンピックが同年に開催されていたこともあるので、ただ単に「競技を観る側」としては良いかも知れません。
ですが、「出場する側」としては、肉体的・精神的なピークがズレてしまうでしょうし、モチベーションを保つのも大変そうです。
オリンピック以外のイベントへの影響
東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の晴海選手村は、大会後は住宅街としてリニューアル工事を実施した後分譲される予定ですが、リニューアル工事のスケジュールもずれ込むとしたら、建設業界にも経済的な打撃が及びそうです。
オリンピックは過去に中止されたこともありますが、中止の理由は戦争でした。今回の状況は戦争ではありませんが、影響が世界中に及んでいることと、未だ解決策が見つかっていないことを考えると、戦争よりも深刻な状況なのかも知れません。
落語の三方一両損では有りませんが、今日の時点では、経済的にも、文化的にも、歴史的にも、ダメージのより少ない解決策が見つかることを祈るばかりです。
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