革小物は見た目が9割!という訳ではないですが…
手間ひまかけてロウ引きした糸は、革小物が完成した後もキレイな状態で長持ちさせたいものですよね。革も糸も道具も方法も、自分がこだわりたいポイントにとことんまでこだわれるのが、既製品にはないレザークラフトならではの醍醐味だと思います。
今回の記事では、ロウ引きした糸の擦り切れを予防するための、「溝切り」というテクニックについて解説していきます。
縫い穴を空ける前にガイドラインを引く
レザークラフトで手縫いをする場合、革に針を刺して縫うのではなく、あらかじめ縫い穴(糸を通す穴)を革に空けてから縫います。その穴を綺麗に空けるためのガイドラインとして、縫い合わせる革のフチから一定の距離のところに線を引きます。この線のことを「縫い線」と言います。
縫い線には2種類あって、革に線(と言っても、革に色を着ける訳ではありません)を引く方法と、彫刻刀のようなレザークラフトの専用道具で、革にスジを掘り込む方法があります。
縫い線を引く道具
まずは、2種類の縫い線を引くための道具を紹介します。
2本菱目打ち
菱目打ちは、そもそも縫い穴を空けるための道具ですが、縫い線を引く目的でも使えます。初心者向けの道具セットにも必ず入っていますが、セット品はコンパクトに纏めることを信条としているようで、柄の部分が短いものが多いです。
菱目打ちはレザークラフトをする上で最も長く、最も多く使う道具のうちのひとつですので、しっかりしたものを単品で買ったほうが良い気がします。
(東急ハンズで1000円前後で買えます。)
マルチステッチンググルーバー
Groover 意味…溝を掘ること・人
先端に取り付ける部品を交換することで、手縫い用の「線引き」と「溝切り」の2種類の溝を付けることができる道具です。また、ガイド(L字型の部品)とグルーバー刃(溝切りをするための部品なので刃が付いています!)の向きを反転させることで、左利きの人でも使うことができます。
(東急ハンズで2860円で買えます。)
超個人的で、わざわざブログに書くことでもないのですが、私は数あるレザークラフトの道具の中で、この道具が一番好きです!
1台N役ってとても好きな響きです。これは多分、子供の頃に見ていた仮面ライダーBlack RX(1人3役のチート性能)やトランスフォーマーのシックスショット(1人6役の忍者ロボット)、魔神英雄伝ワタルのガッタイダー(…はちょっと違うか)などが影響している気がします。
閑話休題。
このマルチステッチンググルーバーという商品は、通常は線を引くための「モデラ」と溝切りをするための「グルーバー刃」、それらを交換するときに使用する小さな六角レンチが付属するのですが、私が購入した商品には「モデラ」と「六角レンチ」が付属していませんでした。
商品を手に取る際、遅くとも会計を済ませたその場で確認すれば良かったのですが、そもそも「溝切り」をしたくて買ったので、「モデラ」が付属品であることに気づきませんでした。(「線引き」は2本菱目打ちでもできますし…)
交換時に使用する六角レンチも既に持っていたので、不便は感じずにしばらく過ごしていました。(日曜大工や電子工作などをする人は工具箱に入っているんじゃないでしょうか?)
メーカーによっては、モデラとグルーバーだけでなく、ヘリ落としとしても使える製品も有るので、マルチステッチンググルーバーの「マルチ」の部分を存分に味わいたい方は、至極当然のことですが付属品がパッケージに同梱されているかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。(トホホ…)
2本菱目打ちで線を引く
前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入ります。縫い合わせる革のフチに2本菱目打ちの片方の刃を当てて、もう片方の刃で革に線を引きます。単純なことですが、こうすることで革のフチと平行な線を簡単に引くことができます。
菱目打ちは刃先を立てて使うと、縫い線が引き易いです。更に、革の他の部分を傷つけないように刃先を革のフチに当てるようにするのがコツです。
マルチステッチンググルーバーで溝を切る
お待たせしました。マルチステッチンググルーバーの出番です。マルチステッチンググルーバーに付属している六角レンチで、先端部分のイモネジをゆるめます。
イモネジを緩めたら、次にグルーバー刃を差し込みます。ひとつ注意する点は、グルーバー刃には向きが有るので、刃が付いている方が革に当たるように、向きを確認してください。
グルーバー刃を差し込んだら、イモネジを六角レンチで軽く締めて固定します。小さいので、力の入れすぎに注意しましょう。
刃の交換が済んだら、マルチステッチンググルーバーを寝かせて持ち、ガイドを革のフチに当てて手前に引いていきます。木材をカンナで削るときのように、掘られた革がスルスルっとグルーバーの穴から抜け出てきます。
菱目打ちで引いた縫い線と、グルーバーで溝切りした比較写真を上げておきます。
まとめ
縫い穴を空ける工程をすっ飛ばしてしまいますが、それぞれの縫い線を使って革を縫うと次の写真のようになります。
【参考】菱目打ちでステッチをまっすぐに空ける方法!(レザークラフト入門)
溝を切ることで、縫い合わせたときに糸と銀面の高さが揃い、糸の摩耗が防げます。また、銀面の凸凹が減るので、革小物を持ったときの手触りが良くなります。
皆さんも、レザークラフトならではの手間をかけて、好みの革小物に仕上げていきましょう!
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